これまで多くの印象的な“女性像”を観客に提示してきた劇作家・演出家の永井愛さんにとって、初の試みとなる男性のみの舞台「こんばんは、父さん」。異色の男性三人芝居のうちの一人、溝端淳平さんにお話をお伺いしました。
二兎社公演「こんばんは、父さん」の舞台に出演が決まったときの率直なお気持ちをお聞かせください。
勿論ありがたいし嬉しかったのですが、それ以上にプレッシャーの方が大きかったです。本当に僕でいいのかなと不安に思いました。
「こんばんは、父さん」は日本を代表する劇作家 永井愛さんの脚本・演出による、異色の男性三人芝居ということですが、溝端さんの役どころを教えてください。
平幹二朗さんは戦後日本の何もない時代から高度成長期でどんどん発展していった頃に20代だった役、佐々木蔵之介さんはバブル時代で、日本がものすごく好景気だった頃に20代だった役、そして僕はちょうど今が20代(23歳)なんです。
今は、生まれた時から衣食住に困ることなく物質的には豊かですが、不景気と言われる中で夢を持つことが出来ず、とても現実的に生きている・・・という今を生きる若者の役になります。
世代の異なる三人の男性が織りなす人間模様がこの舞台の大きな見どころの一つですが、溝端さんご自身は世代の違う人たちから吸収していることはありますか? あるとしたらどういった部分ですか?
TVやドラマ、舞台など多くのお仕事をやらせていただいていますが、色々な人の力を借り、支えられていることで出来ているんだと思っています。
だから世代の違う人たちというより、いつも、周りの人や出会う人たちから色々なことを吸収させてもらっています。そのためには、僕自身が周りの人が支えたいと思ってくれる魅力的な人物でいること、どんなことでも真剣に取り組むことが大切だと思っています。
役づくりをする上で何か心がけていることはありますか?
役にも作品にもよるとは思いますが、自分に一番近い感情や気持ちを役と照らし合わせたり、例えばこういう気持ちだろうなとか色々置き換えたり照らし合わせたりしています。
溝端さんにとって「舞台」ならではの魅力とは何ですか?
ドラマや映画では中々できない、本番が何回もあって同じセリフを何回も言って、稽古も含め色々試せる期間が長いのが魅力のひとつなんじゃないのかなと。それに取り直しもNGもない、生ならではの緊張感と興奮も毎回楽しみです。
仕事からプライベートの切り替えはどうやっていますか?
時間に余裕がある時は料理もしますし、自分で言うのもなんですが、なかなか上手なんですよ(笑)ゴーヤーチャンプルも好きですし、納豆とオクラを混ぜるだけでもウマイ!料理をすると心が満たされますね。
今後チャレンジしてみたい作品や役は何ですか?
古典をやってみたいです!時代劇も勿論なんですが、あとシェイクスピアとかもやってみたいです。
これから俳優を目指そうとしている人たちに何かアドバイスを。
僕自身、まだまだ発展途上なんで、大したことは言えませんが、表現するということは、自分の中にあるものをアウトプットするだけじゃなくて、演出家の言うことを理解しようと努力するとか、たくさんの作品を観て感じて表現の幅を広げるインプットの努力も必要だと思うんです。
僕も今まで色々な役を演じて来ましたが、前はものすごく頭が固くて、演じるってどういうことだ?って、頭で考えてばかりいました。けれど色々な役をやる中で、その役がどういったことを感じているのか、何を考えているのか分かった時に、演じる楽しさを知ることができたんです。だから、色々なことにチャレンジし、色んな方と出会って、色んな価値観に触れていくことが大切なんじゃないかと思っています。
これからの活躍にますます期待が高まっていますが、今後はどんな活動を続けていきたいとお考えですか?
今年は、野島伸司さん脚本の「ウサニ」(8月3日~26日東京)、そしてこの「こんばんは、父さん」という2本の舞台をやることになりました。舞台は映像よりも観て頂けるお客様の数も少なく、ここ数年で勝負したいと思っていた僕にとっては、初めは素直に受け入れることが出来ませんでした。焦りですかね。けれど、今までやってきた舞台のお仕事の経験が、映像の世界でもとても生きているんです。そんなことを考えていた時に、TVドラマで共演させて頂いた阿部寛さんから『俳優は30歳になってからだよ』と言葉をもらい、それなら、今は、成長する方が大事だなと。変な焦りがなくなりましたね。だから今は、俳優として認められ成長したいです。
では最後に読者の皆さんへのメッセージをお願いします。
佐々木蔵之介さんと平幹二朗さんといった偉大な先輩たちと同じ舞台に立てるのが自分にとって一生の財産になると思うし、自分も先輩たちから学んで成長できる最高の環境だと思います。ひと皮剥けた姿を皆さんに観てもらいたいです。