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内野 聖陽(うちの まさあき) 1968年9月神奈川県生まれ。舞台俳優として活躍する一方で、96年に出演したNHK連続テレビ小説『ふたりっ子』で注目を集め、以降、多数の作品に出演。主な出演作は、【映画】『あかね空』(07)『悪夢のエレベーター』(09)【TV】「風林火山」(07)「ゴンゾウ 伝説の刑事」(08)「JIN-仁-」シリーズ(09・11)「臨場」シリーズ(09・10)「忠臣蔵 その義その愛」(12) 他。

内野聖陽 現代社会にはなかなかいない“闘う男”!!「俺のとは違うなぁ。」って自分の違和感に忠実な倉石が素敵。

09年4月からテレビ朝日系列で放映された横山秀夫原作の大ヒットドラマ『臨場』がついにスクリーンに登場!!
鋭い眼力と執念で事件の真相に迫る敏腕検視官・倉石義男の活躍を描いた本作。
ドラマに引き続き検視官・倉石義男役を演じた内野聖陽さんに話を伺いました。

―TV放映終了後も続編希望の声が多く今回の映画化に繋がったと伺いましたが、映画化をされると聞いたときの印象は?

はじめは『臨場』っていう世界観が、劇場にふさわしいのか?というのがまずありました。僕は『臨場』のお話をスピリチュアルなものと捉えていて、映画のお客さんに向くのだろうか、と出演について考えた時期もありましたが、プロデューサー陣からの非常に熱い思いを寄せられまして…。何度も何度もキャッチボールを重ねて、台本も10稿以上書き直して最終的な台本になりました。プロデューサー陣を始めスタッフのみなさんがそれだけの思いをもって作られるのだから、こちらもそれだけの思いでお返ししないといけないなと仁義的な気持ちで受けさせていただきました。
映画化にあたってはテレビシリーズのファンの皆様のために、というだけでなく、劇場版単体だけで見ていただいても「面白かったね」って言ってもらえる作品にしたいということを意識しました。

―豪放で破天荒な倉石というキャラクターを演じてこられたわけですが、倉石はどのような人物ですか?

倉石の良さは、表にはでないけど根底には深い愛情を持っているというキャラクターにあると思うんです。その上で、僕なりに大事にしていたテーマのひとつは「最悪の上司でいこうっ!」でしたね(笑)。実は、倉石って心の中では後輩の成長や捜査の正しい流れを願ってる人。だけど、オモテへの表れ方としてはあくまでも“最悪な上司”“最悪な同僚”ってことは大事にしました。
倉石は、現代社会にはなかなかいない「闘う男」なんですよね。一般的には組織の中で生きていたら、所属した部署で自分の職務を全うするのが社会人の生き方。でも、倉石は検視官でありながら、真実を探るためには越権行為も厭わない。疑問に思ったことがあれば、「俺のとは違うなぁ。」って言ってどこでも乱入しちゃう。自分の違和感に忠実なところが素敵ですよね。その確信を持って自分の領分を踏み越えて行く人ってあんまりいないじゃないですか。今やちょっと古臭いタイプかもしれませんが、倉石は闘う男です。彼は組織に属していながら最終的には組織を信じていない部分を持っている。死者の声を聞くところから真実にアプローチする男だから、組織の論理とぶつかることが多々ある。倉石が大事にしてるのは組織の体面を守ることではなくて、死者の「真実の声」を拾うことなんですよね。

―映画ならではの違いはありましたか?

映画だからこうしよう、というのはなかったです。ドラマ版ではスタッフを含め良い関係性が出来上がっていましたから、それをもとに映画では何ができるのかを考えましたね。TVドラマを見ないと楽しめないという作品にならないように、初めて臨場という世界に触れる方々にも十分に楽しんで見て頂けるように気をつけました。また、倉石班の人間関係、捜査一課との対立関係、などなど、チームワークが出来上がっているだけに、なれ合いの関係にならないように緊迫感のある関係性を改めて掘り起こしました。捜査一課や検視官チームの仲がいい感じって気持ち悪いでしょ(笑)。

―撮影中、一番大変だったことは?

一番大変だったことは、橋本監督の執拗なカット割り攻撃ですね。続き

皆が睡眠不足の中、監督の目だけがギラギラ輝き続ける(笑)。それでも仕上がりがいいから皆ついていくんだなと思います。橋本組は、撮影3日目にして、10日間ぐらい経過したような感覚に陥ります。え?まだ3日?みたいな。エネルギーを吸い取られました(笑)。ドラマの時からでしたけどね。大変ではありましたけど、自分も負けてられないって、いい意味で奮起させられました。

―リアルで緊張感あふれる検視シーンも見どころではないかと思います。劇場版で警察監修をされた倉科さんについて教えてください。

倉科さんは冗談交じりにですが「倉石は若かりし頃の俺だ。」っておっしゃってましたね。亡くなってしまったのですが、共に臨場を作ってきた方で刑事監修の飯田裕久さんという方がいらっしゃいました。飯田さんは、美術チームと一緒に、監修、刑事考証の範疇を乗り越えてリアルな警察現場の風をたくさん吹き込んでくださいました。フィクションサイドに立った刑事監修をしてくれたおかげで『臨場』は、他に例を見ないほど現場の臨場感が高まったといっても過言ではない。今回、映画版で刑事監修をしていただいた倉科さんは、飯田さんの産みの親というか、飯田さんの師匠のような方なので、現実とフィクションを区別してお話をしてくださる。(今回の劇場版の中のシーンにある)バスの中の検視は現実の検視では通常はやらないそうなのですが、亡くなった現場で検視する、というフィクションとしての決まりごとを理解してくださる方で、現場を豊かにする為の刑事監修をしてくださるのが倉科さんも飯田さんと一緒でした。「それはやんないよ」という削除法ではなくて、あえて、プラスの刑事監修をしてくれる方。倉科さんは、飯田さんの遺志をついでやってくださり、非常に感謝しています。

―では、倉科さんから教わったことは?

刃物の傷口は、刺してから引き抜かれるために、サクラの花弁みたいな形になるだとか、このやり方は、○○○殺人事件の時に生まれたやり方だとか、非常に興味深い話を沢山してくださいました。「臨場」のよさは、刑事さんが普段見ている現場感に極限まで近づけようと努力している作品だってことかもしれません。俳優やスタッフが、こうゆう時はどうするんですかね?って聞くと、倉科さんも困り果てて「そりゃ、ケースバイケースだよ。」って困り果てるくらい食らいついてましたね(笑)。

―「臨場 劇場版」おすすめどころは?

映画好きの方には特におすすめです。
内容が濃厚で様々な問題を投げかける作りになっているし、なにより大スクリーンで見るといろんな情報がわかりやすく目に飛び込んできて見ていてすごく納得しちゃいました。
DVDで見たのではちょっと面白さが半減するかもしれません(笑)。
人が亡くなってから始まる検視官のお話で、人の死をたくさん扱ってる作品ですが、自分の中では、近くにいるかけがえのない愛する人を大切にしようというシンプルなことを大事に演じたつもりです。人の“死”から生きることのいろんな局面を見つめなおす機会になったらうれしいなと思います。

映画『臨場 劇場版』 ●6月30日(土)全国ロードショー 横山秀夫原作の大ヒットドラマ、待望の映画化!! 無差別通り魔事件が起こり、犯人は心神喪失を認められ無罪となった。そして2年後、犯人を担当した弁護士と精神鑑定を行った医師が殺害され、通り魔事件の遺族が疑われる。しかし、検視官・倉石は死亡推定時刻に疑問を抱き・・・。物言わぬ死者から真実を拾い、そこに隠された真相に迫り、傷ついた被害者遺族の“心”をも救う―。型破りな検視官・倉石義男が 大スクリーンに帰ってくる! 監督:橋本 一 出演:内野聖陽、松下由樹、渡辺大 他 配給:東映

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