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チャン・ドンゴン 1972年、韓国生まれ。『敗者復活戦』(97)でスクリーンデビューし、韓国で最も権威のある映画賞、青龍映画賞新人俳優賞を受賞。その後、数々の賞を受賞し、名実ともに韓国のトップ俳優となった。2010年には『The Warrior’s Way』でハリウッド主演デビューを果たし、国際派俳優としても活躍の場を広げている。

チャン・ドンゴン 実話・・・!?こんな数奇な運命を背負った人がいるなんて。役者としてその人の人生に引かれるものを感じた!!

『シュリ』『ブラザーフッド』のカン・ジェギュ監督7年ぶりの最新作がついに公開。オリンピックを夢見た2人の青年、辰雄(オダギリジョー)とジュンシク(チャン・ドンゴン)。日本・ソ連・ドイツ3つの軍服を着ることになった数奇な運命を背負った2人が、アジアからノルマンディーまで12,000キロを生き抜いた真実の物語を映画化。今回、夢を諦めず、どんな時でも走り続けるジュンシクを演じたチャン・ドンゴンさんに話を伺いました。

―ジェギュ監督の前作『ブラザーフッド』出演後に、戦争映画には二度と出演しないと決められていたそうですが、なぜ今回、『マイウェイ』に出演を決意されたのですか?

『ブラザーフッド』を撮った後、戦争映画はもう二度と出演しないと決めていましたし、監督も二度と撮らないと思っていました。しかし、「ノルマンディーのコリアン」という今回の映画の元となったドキュメンタリーを観た時に、すごい運命を生きた人がいるんだと知り、役者としてその人の人生を演じてみたいと、単純に思いました。また、最初監督からお話をいただいた時、まだ監督が演出を直接されるか決まっていなかったのもあり少し迷いましたが、監督が直接演出を手掛けられると聞いて迷わず出演を決めました。

―脚本を読んだ時に、前作『ブラザーフッド』との違い・魅力はどこだと感じましたか?

『マイウェイ』の背景は戦争時代ですが、ただの戦争映画ではなく、人物や人間に重点を置いて描かれているという点が『ブラザーフッド』と異なる点だと思います。そして、日韓中とアジアの役者が集まって、共演できるというのも魅力の一つだと思います。

―苦しい状況になりながらもいつも夢を忘れないジュンシク。そんなジュンシクについて、どう思われましたか?また、演じるにあたって注意した点はありますか?

私が演じたジュンシクは、生きる理由が明確な人物です。たぶん、ジュンシクにとって日本軍やソ連軍、ドイツ軍の軍服を着ることは大して重要ではなかったんだと思います。生きて故郷に帰りもう一度走りたい、それだけ。はっきりとした夢と希望が、逆境と苦痛を乗り越えられる原動力となったことは間違いありません。この映画は多くの人物が登場していますが、唯一、最初から最後まで変わらない強い信念を持った人物はジュンシクだけだと思います。映画に登場する人物像として、変化がないキャラクターは退屈に描かれてしまう可能性もあるが、それをどう表現するかによってジュンシクが変わるし、信念を貫き、変わらないということにどう価値をおき、上手く表現できるかを考えました。

―今回の映画では、オダギリジョーさんやファンビンビンさん、違う国の俳優の方々と共演されていますが、言葉の壁で大変だったことはありましたか?

以前も日本語で演技をしたことや、言語が違う俳優さんと共演した経験があったので、それほど、“言葉の壁”を感じることはありませんでした。ただ、その度に感じることですが、演技というのは、単純に言葉を交わすということではなく、お互いの感情や気持ちを共感することであり、それには言葉が通じるかどうかは、さほど重要ではないと思っています。今回の撮影でも改めてそれを感じました。また、ファンビンビンさんとの撮影は、劇中で私は中国語が分からない設定だったので、演技するのに全く支障がなく、助かりました(笑)。

―日本語の台詞が多かったと思いますが、撮影は順調だったんですか?

日本の俳優さんと共演したことがあったので、今までの経験を活かすことができました。言葉の小さなニュアンスやイントネーションまで完璧にすることはできませんでしたが、それは大きな問題ではなかったと思います。オダギリさんにも本当に色々助けてもらい、撮影を無事終えることができました。また、オダギリさんは、仕事に対してとても真面目に悩み、俳優という仕事について確固たる考えを持っている方だったので、お互いとても通じ合えたと思います。

―今回、共演したオダギリさんの印象を教えてください。

初めてオダギリさんの事を知ったのは、崔洋一監督の映画『血と骨』を観た時で、ビートたけしさんの家出した息子役としてでした。続き

演技を観て、この俳優は誰だろうと思うほど、印象に残っていたんです。だから今回、映画でオダギリさんと共演することが分かり、何よりも嬉しかったのを覚えています。自分も経験がありますが、外国に来て、外国のスタッフの中でやるということは、とても大変だったと思います。最初は通訳がいないと話せなかったり、お互いに近づくタイプではなかったので、距離がある感じでしたが、少しずつ撮影を進めていく内に、お互いの事を知り、映画のジュンシクと辰雄のように友だちでもあり、いいライバルになれたのではと思っています。それがこの撮影で手に入れた財産だと思います。

―マラソンシーンや戦闘、爆発シーンが多い撮影現場だったと思いますが、苦労された点などはありますか?

以前、戦争映画に出演したことがあるので、撮影前に他の俳優さんに、撮影現場の雰囲気やスケールなど色々と聞かれたので、アドバイスをしたんです。「耳栓はしたほうがいいよ」なんて経験者として得意げに説明してたのですが、初めての爆発シーンで一番驚いてたのは僕でした(笑)。『ブラザーフッド』の時よりも爆発の規模は大きく、以前に比べると技術的な面での進歩も感じました。戦闘シーンの撮影中は、規模の大きさに関わらず、爆弾を埋めた位置を確認したりなど、集中力が必要な撮影が多く、疲れました。マラソンの部分は撮影前にプロの方の指導を受けて練習をしたんですが、一度に8キロ走るだけで精一杯でした。ただ、オダギリさんは日本で実際のマラソン大会にまで出られたそうですよ。

―戦闘シーンなど危険な撮影が多かったと思いますが、撮影中に苦労したことは何ですか?

映画を観ていただいたら分かりますが、戦争シーンなど大変な撮影が多くスタッフも苦労していたと思います。私が苦労したのは、寒さですね。寒い中、軍服一枚で撮影をするのは大変でした。

―第2次大戦は、それぞれの国で悲劇として残っている戦争だと思います。ドンゴンさんは今回の映画、どのような思いで演技に取り組まれましたか?

この映画の時代に生きていた祖父母と小さい時よく過ごしていましたし、僕の父は韓国戦争を体験しています。そのため、戦争について色々な体験談を聞きながら育ち、同世代と比べると、戦争を直接経験した人の話を聞く機会が多かったように思います。オダギリさんも言っていましたが、映画の撮影だけでも悲惨だと思うのに、実際の状況は果たしてどうだったのかと、撮影中に何度も考えました。映画を通じて、戦争の悲惨さを感じ取っていただければと思います。

―ドンゴンさんは今回演じたジュンシクをはじめ、“強い男”を演じる機会が多いようですが・・・。

そうですね・・・。意図的にそういったキャラクターを選んでいるわけではないですが、このような役柄は演技や表現をすることにやりがいを感じています。今後は、日常のライフスタイルを演技できる役があれば、挑戦したいです。

―本作をどういった方に観てもらいたいですか?

今、自分の夢を持ってない方や自分の夢に疑いを持っている方、希望を信じない方、そういう方たちにこの映画を観てもらいたいです。改めて、自分の人生について考え直すきっかけになる映画だと思います。

―ファンに向けて一言お願いいたします。

皆さんが十分に期待していい映画に完成しました。皆様にお見せできる日が来るのを役者としても個人的にも待ち遠しいです。ぜひ、スクリーンで迫力映像をお楽しみください。ありがとうございます。

映画『マイウェイ 12,000キロの真実』●2012年1月14日(土)全国公開 1928年、日本占領下の朝鮮半島。憲兵隊司令官を祖父に持つ日本人の少年・辰雄(オダギリジョー)と、使用人一家の息子である朝鮮人の少年・ジュンシク(チャン・ドンゴン)。マラソンでオリンピックを夢見た2人。しかし、時代は国籍の違う彼らの友情を許さなかった。時代に翻弄され、夢、友情、愛、そして国までも失い、それでもなお生きることを選んだ彼らの真実の物語。監督:カン・ジェギュ 出演:オダギリジョー、チャン・ドンゴン 他 配給:CJ Entertainment Japan/東映

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