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ワクドキ おとなの社会学

熊本市のリーダー大西市長にインタビュー
「量」ではなく「質」。
多様な価値観が満足できる生活都市へ。

もっともっと熊本が好きになりたい。
そのために必要なのは、まず自分の住むまちを知ること。
そこで「熊本市のことならこの方に聞け」ということで、大西一史熊本市長にお話を伺ってきました。

Q1.市長に就任されてから数ヶ月経ちました。今の正直な気持ちを教えてください。

市長になった最初の瞬間っていうのはもう「緊張感」なんですよ。
何かものすごい緊張したんですよね。「これは大変なことになった!」「あれ、市長になっちゃった!いいのか?俺は」と。

―でも(市長に)なりたかったんですよね?

そう(笑)。なりたくて立候補したんですけどね。 だって「74万人の生命財産を預かる」って、口では簡単に言えるけど、実際そうなると「大丈夫か??」って。
ちょうどほら温泉入って体がグ~~ッとあったまってくる感じあるじゃないですか。 あんな感じでジワジワくるんですよ、プレッシャーが。それからはもう大変。
次々に日程が動いていくんで、本当、追われまくってる感じですよね。 まるでシンデレラのように、一夜にしてすべてが変わって「市長!市長!」って言われるようになる。夢の中にいるような感じがありました。
それから正直なところで言えば「こんな忙しいの!?」って。忙しいのはわかってました。
だけど、それにしてもまだ一日も休みが取れてないんですね、今日の取材日時点で。 幸山前市長から「自分で休もうとしないと休めませんからね」っていうのは言われてた訳ですよ。 でも頑張るじゃない、最初だから。
で、来たもの全部受けようとするんだけど、もう「ワークライフバランスが大事だ」とか、どの口で言ってんの(笑)って感じで。 だから相当自分で抑制的にやっていかないとダメだなと思ってます。 体調のことも含めて、やっぱり自分一人しかいないんでね。


Q2.市長がお考えになる熊本市が他都市に誇れる点は?

まず「あらゆるものに手が届くまち」だということです。
ちょっとおいしいもの食べ行こうと思ったらすぐそばにある、自然を感じようと思ったらすぐにアクションを起こせる、アウトドアだって何だって本当に手頃に色々なものが手に入るんですね。
手に入らないものはネットで買っちゃえって世界ですよね。
極端な話をすれば。僕は東京で12年間生活してたんですが、東京は手が届かないんですよ。
その代わり届いた時には、日本中でここにしかないものがあったりするのは確かなんだけど。
だから生活を満たす色々なものがコンパクトなエリアにあるっていうのがまず熊本の誇れる点ですよね。
それから「まちが綺麗だ」っていうこと。東京の人から「熊本のまちって綺麗ですね」って言われるんです。
意外にゴミとか落ちてるって思うんですけど、言われてみるとそうなのかなって。
緑も多いし、切り取る景色が美しいですよね。 それは意外と人から教えてもらったっていうか。うん。
それとありきたりだけど「水がおいしい」。 蛇口をひねってあれだけ匂いのしない、甘くておいしい水が飲めるっていうのはすごいことなんですよね。
東京で歯を磨いてる時に「この匂いは何だ!?」と思ったんです。
歯磨き粉をつけて、うがいをするのに水の匂いがするって、もう半端じゃなく臭いわけですよ。
それを思うと、いかに「恵まれた自然によって生かされてるのか」っていうのを実感しますよね。
それから物価が安い。たとえば何かしようと思った時に、東京にいたらお金なかったらどうにもならない。
そもそも電車に乗れない訳だから。熊本にいると安いコストで豊かな生活ができるというんですかね。
だから価値観がマッチすればすごく熊本はいいまちですよね。


Q3.反対に、ここが課題かなというところを教えてください。

課題というか、マイナスポイントで言えば、「中途半端に映るところがある」ということですよね。
「そこそこ何でもあるね」っていうまちが実は熊本。だから「手が届く」っていうのはそういう意味でもあるんです。
「もっともっと」を追求する場所ではない。
でも「そんなに欲望を追求しなきゃいけませんか」っていうのは、僕が歳を取ってきたからかもしれないけど、そう思いますね。
こぢんまりとして中途半端なところはあるけれど、それが逆にプラスになる部分もあるんじゃないかなと思ってます。


Q4.これから熊本市をどうして行こうとお考えですか?

市長選に当たって作ったマニフェストは、約1,300人の人たちとの直接的な意見交換の中から出た、本当にリアルな声を集めたものなんです。
だからデコボコありますよね。すんごい詳しく書いてあるものと、フワッとしてるものと。
でも人のニーズってそういうところがあると思うんです。 具体的に今困ってて、「防犯灯をとにかくつけてください」っていうのがある一方で「いつまでも持続可能なまちにしてください」っていうのもある。 1,300人の意見は、あまりにも多様で、生活臭く、無謀な夢であり、そして切実で。
とにかくあらゆるものが実は生活の中に詰まってるんです。そして、お互い様で解決していける部分も結構たくさんある。
だから地域で解決できることと、行政や政治の力でやっていくこと。それをきちんと踏まえて、マニュフェストを作ろうと思ったんです。
私が目指す熊本の姿は「誰もが憧れる上質な生活都市」。誰もが憧れるってことは、一方では自分たちに誇りがなければ、誰も憧れないですよね。
憧れの存在ってたぶん自分にきちっとしたプライドとか誇りがあると思うんですよ。

―市長すみません、上質ってどんなものなのかと思って。セレブな感じもしたんですけど。

うんうん何かほら、スノッブな鼻持ちならない人たちが言ってる上質ってあるじゃないですか。
そうじゃなくって、色んな人たちのライフスタイルの中ですごく「質感がいいな」と思える場面がたくさんあるまちにしたいんですよね。
たとえば食べ物でいうと、熊本ならではの素材感が上質っていうのもいいし、逆に色んな工夫をして加工した、技術で上質なものでもいい。
ただ単に、バス停に座って待ってる間の時間が心地いいから上質だっていうのもあるだろうし。
すごく漠然としているかもしれないけど、上質さって、感じ方だと思うんです。
「あぁ、豊かだな」って感じてもらえる、色んな価値観が満足できるような生活ができる都市
にしたいってことですよね。
そうするとやっぱり「量」ではないなと。人口が多けりゃ偉いのか、違うだろう!と。
財政力が高いから偉いのか、そうじゃないでしょうと。
そうじゃなくて「バランスのとれたまち」であることが、一番僕は上質なことなのではないかと思うんですよ。
大きくない都市であっても、できることってたくさんあるような気がしてて。
量ではなく、物質的な豊かさではなく、何て言うのかな空気感とかそういうものを大事にする。 そんなまちを目指したいですね。


Q5.市長から私たちにお願いしたいことは?

みなさんにお願いしたいのは、「熊本を褒めてください」ということ。
褒めようと思って探すと、色んな新しい発見があるんです。「熊本を褒めてください。そしてそれを発信してください」。
発信するにはまず材料がないとできないですよね。
僕、熊本城をより好きになったのは、加藤清正っていう人がね、あれだけのお城を6~7年で建てちゃった訳ですよ。その時に清正は、大工さんたちにしっかりごはんを食べさせて、お酒も時にはふるまって、で5時には帰れと。
だからワークライフバランスを加藤清正はちゃんと知っていた(笑)と。
だからこそみんな「清正公さんのために頑張んなきゃ」って言ったんです。
たとえばそういうのもあるガイドブックには、載ってたりするんですよ。
だからまず日常にあるものをもう一度見直して、褒める材料に気づくこと。
そのうえで「もっとここはこうした方がいい」と思った時に、それを行政に伝えてください。
まちはねぇ、褒めると伸びるんですよ。 人は褒めすぎると調子に乗るけど、まちは調子に乗らないから(笑)。

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市長のツイッター拝見しました。
政治家らしからぬつぶやきで、面白いですよね。

今やってみましょうかねぇ。「ナッセなう」。
いや僕はね、とにかく今気持ちに余裕が無いから、そういう時に発信とかしちゃダメだと思ってるんですよ。 でも「ナッセなう」ぐらいなら…。

市長につぶやいていただいた記念の「ナッセなう」(笑)。
ありがとうございます。

今後はこれまでのような面白い発信はなくなってしまうのでしょうか。
お立場上、仕方がないのかもしれないけど、残念な気がしますが。

僕はできるだけ等身大で発信をしたいと思っていたので、これまで結構好き放題言ってきたんです。
ただ、市長になって自分の言葉の重さっていうのをとっても感じてるので、やたらふざけたこともねっていうのはあるんですよ。
だけど、自分の素直な気持ちを表現するっていうのは大事なことだと思っているので、心に余裕がある時にやろうかなと思ってます。
やっぱり「身近な市長」っていうのは、目指すところなんで。政治家って明るくないとダメっすよねぇ。
だって市民を明るくできませんもん。だからどんなに辛くても極力テンション高く!
「明るいリーダーのいるまちは明るいだろう」ということで。
ただアホなだけなんですけど(笑)

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─ニックネームを教えてください。

ニックネームはあんまり無いんですけど風邪薬の「コンタック600」のカプセルあるじゃないですか。うちの娘が『Mr.CONTAC』に似てるって。似てるでしょ?

コンタックと市長

─政治家になって一番驚いたことは?

何だろうなぁ。「自分が思ってる以上に偉くないよ」ってことかな。

─自分の好きなところは?

もともと好きなところだらけ(笑)なんですけど。どんな人とで仲良くなろうとするところ。「こいつ苦手だ」って思う人と仲良くなった時の満足感っていうか。「いつかわかりあえる」みたいな。すごく平和なヤツです。あと割りと明るい。あとざっとしてるところ。

─反対にダメだししたいところは?

猫背。もうこれは「直さんといかん」っと思ってます。

─モテましたか?

モテました。ええ。(サラっと)

堂々たる言いっぷりに、二の句が継げぬ取材陣。 さらに追いうちをかけるような市長の一言。

『すごいモテました』

取材陣、爆笑。

すごいモテてたっていうのはウソ(笑)ですけど バンドやってた時は、まあまあモテてましたね。 だけど大学時代、女性不審に陥るような出来事があって、 それから僕、しばらく彼女を作らずにいた時期があったんです。 恋愛に臆病になった自分がいましてねぇ(しみじみ)。 そんな時期が3年ぐらいあったかな。

─最近ワクドキしたことは?

してないなぁ。 とにかく毎日必死で仕事をしてるので、 あまりワクドキする瞬間がないんですよ。 毎日ドキドキ、緊張はしてますけどね。 そういう意味じゃ市長職っていうのはワクドキしますね。 毎日色んなことがあるから。 何かすみません、面白くなくて(笑)。

ドラムに胸キュン

~大西市長の青春物語~

小学4年生の時に音楽の先生から「大西くん、あなたはリズム感がいいね」って言われたんです。
そう言われて「へぇ~~。リズム感がいい、俺は天才だ。そうか。」と思って(笑)。
それから打楽器にすごい興味を持つようになったんです。一番衝撃を受けたのは、YMOの高橋幸宏。
「何でこの人は機械みたいに正確に叩けるんだろう。すごい!」って。それから嵌っちゃったんですよね。
高校生の頃からドラム教室に通い始めたんだけど、楽しくてしょうがなくて。
1日に何時間も練習してました。バンドも一番多い時で10個ぐらい組んでましたかね。
それで「よし、俺はこれで食っていこう」と思って、高3の時勝負して、SONYのオーディションを受けることにしたんです。
結果は何とグランプリ。バンドデビューには至らなかったんだけど、プロデューサーとかに「東京に来い」とか「なかなかセンスあるね」とか声をかけてもらって「あ、やっぱり俺天才だ」って思ってました。
それから東京の大学に通いながら音楽活動をしたんですけど、やっぱりね、上には上がいるっていうか。
めっちゃくちゃうまい人は、死ぬほど基礎練習をやるんですよ。メトロノーム見ながら2時間も3時間もず~っと。
それ見た時に、「これはとんでもない世界だな」ってすごいビビリが入っちゃったんですね。
初めてその時「俺は天才ではない。天才なんていない」って。
ある時、あるスタジオで一緒になった人が「あれぇ?ここにいたらいけない人、いるんじゃないの」って言うんですよ。
もうショックでね。俺のことだと思って。みんな「それで飯食おう」って思ってる人たちだから、気合いが違うんですよ。
いざとなったら逃げればいいっていう学生の僕とは全然。これではダメだよなと思って。
結局音楽の道には進まなかったんだけど、そういう世界を見れたこと、一流の人たちに触れられたこと、そして今でも仲良くさせてもらってることは本当に良かったなって思ってます。

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