今月のワクドキ InterviewVol.18

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監督・西川 美和×本木 雅弘

監督・西川 美和×本木 雅弘

西川美和(にしかわみわ)
1974年、広島県出身。早稲田大学第一文学部卒。映画スタッフやフリーランスの助監督を経て、02年『蛇イチゴ』でオリジナル脚本・監督デビューし、脚本賞など数々の国内映画賞の新人賞を獲得。その後、『ゆれる』(06)、『ディア・ドクタ―』(09)、『夢売るふたり』(12)でも多くの賞を受賞する注目の映画監督。その他、小説やエッセイの執筆も手掛け、「永い言い訳」は第153回直木賞候補となった。

本木雅弘(もときまさひろ)
1965年、埼玉県出身。88年「シブがき隊」解散後は、映画『226』(89)で本格的に俳優活動を開始。『シコふんじゃった。』(92)に主演し、第16回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞など多数受賞。また、08年の『おくりびと』が大ヒットを記録し、日本映画史上初のアカデミー賞外国語映画賞を受賞。その他、ドラマやCMでも活躍。近年では、『日本のいちばん長い日』(15)、『天空の蜂』(15)に出演し、様々な賞を受賞。

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非常にしんどい話ではあるが、かすかな幸福感が残る作品。
迷うという人間のどうしようもなさは非常に愛しいものだと感じた。

妻を無くした男と、母を亡くした子どもたちの不思議な出会いを描き、直木賞候補にもなった小説「永い言い訳」を映画化。今回、“妻が死んでも涙すら流せない”歪んだ自意識とコンプレックスに溺れる小説家を演じた本木雅弘さんと、原作・脚本・監督のすべてを手掛けた西川美和監督に、作品の魅力を伺った。

―西川監督は映画の仕事を始めてから、ずっと本木さんと仕事したいと思っていたそうですが、実際にご一緒されていかがでしたか?

監督:今回の役の年齢設定や外見が見目麗しい男性であること。恵まれた容姿に生まれてしまったからこそ、自意識が逆にいびつに発達してしまったという点、あとは小説家という職業設定的な知性から、本木さんにはピッタリかなと思っていました。実際、撮影に入るとこんなに自分の書いた登場人物と俳優さんの持っている性格が似ているとは、毎回驚きの連続でした。

―西川監督と初めてお仕事をされた本木さんはいかがでしたか?

本木:私は正真正銘不器用で、器用な役者ではないんです。監督にも「本木さんってこだわっている割には、案外詰めが甘いですよね」とか「結果的に本木さんって不完全な自分を周りに配り歩いてますよね」と言われまして(笑)。でも監督はたくさんの言葉を使って演出をしてくれて非常に男前で、安易に現場の雰囲気だけで首を縦に振る感じではなかったし、考える時間がほしいときにはそういう間を置いてくれたので、その意味でも信頼できるなと思いました。

―本木さん、今回の撮影現場には子どもたちもいましたが、撮影の様子はいかがでしたか?

本木:子どもたちの存在は、一番スリリングでしたね。2人とも役としては自然とハマっていたと思います。ただ玉季ちゃんは5歳の子どもですから、監督いわく「2時間で電池が切れてぶっ壊れる」というので、リハーサルでは人形を相手に私はテストするというような感じで。でも本番は本人がぜんぜん違うことをするんですよ(笑)。

―なぜ今回の「永い言い訳」というタイトルにされたのですか?

監督:すごく意味深なタイトルだと思っていて、未だに私自身なぜこのタイトルなのかがよく分からないですね。小説の第一章を書いている中で、ふと出てきたフレーズで“ながい”という字は長短の“長”だったんです。全然違う文脈で出てきた言葉だったのに、この言葉に全てが集約されていると直感しました。しかもそれが主人公・幸夫が生きていく限り、亡くした妻に対し永遠に続いていく言い訳のような話になるんじゃないかと思い、その時字を長短ではなくて、永遠の“永”を使ったほうが良いと発見し、それから“永い言い訳”が柱になるような気持ちで物語を書いていきました。未だに明確な言葉で説明できないですが、でもこの作品にはこのタイトル以外無いと私は確信しています。

―この作品を通してこれまでのご自身の家族観が変化した部分はありますか?

本木:今回の作品は色々戸惑いながら役者としてある意味自分を通して自分の恥をさらしているような感覚で演じました。監督から貰ったメールのひとつの中に、「意外と人は自分の代わりにちゃんと恥をかいてくれる人を求めているのかもしれません。そしてそうやって恥をかいてくれた人間に対して存外世間は好意的だから不思議です。ですから本木さん、人々の救済のために恥の十字架を背負って共に丘を登りましょう」と。恥をかきながら生き進んでいくというのは、ある種人間の本来あるべき姿を許される感じがする作品だと思います。だから私自身も家族に対しても一皮優しくなったし、自分の人生、そして家族の人生を見守るときにもう一つ大らかに状況を捉えられるようになりましたね、何よりも妻に優しくなりました(笑)。

information

映画『永い言い訳』

写真
©2016『永い言い訳』製作委員会

不倫相手との密会中、人気作家の津村啓こと衣笠幸夫は、妻・夏子が旅先で不慮の事故に遭い親友のゆきとともに亡くなった知らせを受ける。世間には悲劇の主人公を装いながら、実は涙を流すことができない幸夫。ある日、親友ゆきの夫・陽一と子どもたちと出会った幸夫は思いつきから、子どもたちの世話を買って出る。この出会いが幸夫の虚しかった日々を輝かすのだが…

原作・脚本・監督/西川美和
出演/本木雅弘、竹原ピストル、池松壮亮、
黒木華、山田真歩、深津絵里 他
配給/アスミック・エース

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